第八回 セクシャルハラスメント
セクシャルハラスメント
Q セクハラとよく言われますが,法的に問題となるセクハラとは何でしょうか。
A 法的に問題となるセクハラとは,以下に解説するとおりです。
1 「職場におけるセクシュアルハラスメント」には「対価型」と「環境型」があるとされています。
2 「対価型セクシュアルハラスメント」とは職場において行われる性的な言動に対する女性労働者の対応により当該女性労働者がその労働条件につき不利益を受けるものをいいます。
職務上の地位を利用して性的な関係を強要し,それを拒否した人に対し減給,降格などの不利益を負わせる行為が典型的です。
3 「環境型セクシュアルハラスメント」とは,当該性的な言動により女性労働者の就業環境が害されるものをいいます。
4 男女雇用機会均等法21条は,「事業主は,職場において行われる性的な言動に対するその雇用す
る女性労働者の対応により当該女性労働者がその労働条件につき不利益を受け,又は当該性的な言動により当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう雇用管理上必要な配慮をしなければならな
い。」と規定し,使用者の配慮義務を課しています。
したがって,使用者としてはその事実を探知したときに放置することはできず,適切な対応をする必要があります。
5 セクハラに関しては,前提として事実関係の調査が必要となります。被害者からの苦情相談の受付け,加害者からの事情聴取を行い,事実関係が認められた場合,その程度にもよりますが,セクハラを行った社員への厳重注意のほか,懲戒処分も検討しなくてはなりません。加害者からさらなる嫌がらせが行われる,それをおそれ事実調査に協力しないといった弊害も考えられ,加害者の配置転換や移動なども検討する必要があります。
6 裁判例はたくさんありますが,日本でのリーディングケースとして,次の裁判例を紹介しておきます。
福岡地裁平成4年4月16日判決・労判607号6頁
原告(女性)が上司である被告(男性)に、会社内外に性的な悪評を流され,そのことを会社(被告)の代表者らに訴えたものの,その上司と和解できなければ辞めろと言っただけで,環境改善などの適切な措置をとることがなく,その結果原告は退職においこまれたという事例で,慰謝料150万
円が認められました。
文責・弁護士 森 本 精 一
この記事を担当した弁護士
弁護士法人ユスティティア 代表弁護士
森本 精一
保有資格弁護士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
専門分野企業法務、債務整理、離婚、交通事故、相続
経歴
昭和60年3月 | 中央大学法学部法律学科卒業 (渥美東洋ゼミ・中央大学真法会) |
昭和63年10月 | 司法試験合格 |
平成元年4月 | 最高裁判所司法修習生採用(43期司法修習生) |
平成3年4月 | 弁護士登録(東京弁護士会登録) |
平成6年11月 | 長崎県弁護士会へ登録換 開業 森本精一法律事務所開設 |
平成13年10月 | CFP(ファイナンシャルプランナー上級)資格取得 |
平成14年4月 | 1級ファイナンシャル・プランニング技能士取得 |
平成25年1月 | 弁護士法人ユスティティア設立 |