長崎県弁護士会所属

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定期建物賃貸借契約

定期建物賃貸借契約とは

通常の建物賃貸借契約は、期限が到来しても、「正当事由」がある場合でなければ、賃貸人(貸主)から契約の更新拒絶や解約の申し入れができません。これに対し、定期建物賃貸借は、契約で定めた期間が満了することにより、更新されることなく、賃貸借が終了する制度です。
借地借家法38条は、平成11年12月9日に成立した「住宅等の供給の促進に関する特別措置法」において、「期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第30条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。」と改正されました。

期間の定め方

借地借家29条に、「法第604条の規定は、建物の賃貸借については、適用しない。」とされ、最長期間について20年の制限がはずされたため、20年以上何年でもよく、最短期間については、契約の更新がないこととする旨の合意があるときは借地借家法29条の規定の適用がないとされましたので、1年未満の契約期間を定めてもよく、日単位、週単位、月単位の定期借家契約も可能と解されています。

書面契約

定期建物賃貸借は、「公正証書による等書面によって契約する」ときに限って、定めることができるものとされています(借地借家法第38条第1項)。
建物の賃貸人は、定期建物賃貸借契約をする際に、借主に対して、契約の更新がないこと、期間の満了により当該建物の賃貸借が終了することを、契約書とは別にその旨を記載した書面を交付して説明しなければなりません(借地借家法第38条第2項)。
貸主がこの説明を怠ったときは、更新がないことをする定めは無効となり普通借家契約となってしまいます。

中途解約

居住用建物の定期建物賃貸借契約では、①床面積が200平方メートル未満の居住用建物の賃借人であること②転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となった場合であること、この2つの要件を満たす場合には借主から解約の申し入れができることとなっています(借地借家法第38条第5項)。この場合、解約の申し入れの日から1月経過すれば、契約が終了します。

定期建物賃貸借契約の終了

定期建物賃貸借契約においては、契約期間が1年以上の場合、貸主は期間満了の1年前から6か月前までの間(「通知期間」といいます。)に、借主に対して、契約の終了通知を行う必要があります。
通知期間が経過した場合に、賃貸借終了の通知をした場合については、その通知の日から6ヶ月を経過した後は、契約の終了を対抗することができるという救済規定もあります。
定期建物賃貸借の期間経過後に終了通知がなされた場合には、6ヶ月後の終了を対抗できるのかは学説上の争いがあります。解釈上、定期建物ではなくなる可能性が高いので、実務上は期間満了前までには必ず終了通知をすべきでしょう。

賃料増減額請求権の排除

定期建物賃貸借契約では、賃料の改訂に関し特約をすれば、賃料増減額請求権を排除することができます(借地借家法第38条第7項)。

既存の借家契約の効力

① 改正前になされた建物の賃貸借契約の更新については「なお、従前の例による」とされていますので、既存の借家契約に定期借家契約の効力を与えることはできません。
② 従前の借家契約を中途で合意解約できるかについては、居住用借家契約に関しては、当分の間はできないとされています。
③ 上記の規定から、営業用借家契約に関しては、中途で合意解約して新たに定期借家契約をすることは可能です。

 (参考)普通建物賃貸借契約と定期建物賃貸借契約の比較

  普通建物賃貸借契約 定期借家契約
契約方法 書面でも口頭でも可(但し、通常は書面契約が多い)
公正証書等の書面による契約に限る
更新がないこと、期間の満了により終了することを契約書とは別に、書面を交付して説明しなければならない
賃貸人からの明渡し 「正当事由」が必要 期間満了により当然に終了
更新の有無 原則更新する 更新しない
賃貸借期間の上限 20年(平成12年3月1日より前の契約のみ。それ以降は制限なし) なし
期間を1年未満とする契約の効力 期間の定めのない賃貸借となる 1年未満の契約も約定どおり可能
建物賃借料の増減に関する特約の効力 特約の有無にかかわらず、当事者は、賃借料の増減を請求できる 特定の定めによる
中途解約の可否 中途解約に関する特約があれば、その定めによる
①床面積が200平方メートル未満の居住用建物の賃借人であること、②転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となった場合であること
上記以外の場合は中途解約に関する特約があればその定めによる
この記事を担当した弁護士
弁護士法人ユスティティア 代表弁護士 森本 精一
保有資格弁護士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
専門分野企業法務、債務整理、離婚、交通事故、相続
経歴
昭和60年3月
中央大学法学部法律学科卒業
(渥美東洋ゼミ・中央大学真法会
昭和63年10月
司法試験合格
平成元年4月 最高裁判所司法修習生採用(43期司法修習生)
平成3年4月
弁護士登録(東京弁護士会登録)
平成6年11月
長崎県弁護士会へ登録換
開業 森本精一法律事務所開設
平成13年10月 CFP(ファイナンシャルプランナー上級)資格取得
平成14年4月
1級ファイナンシャル・プランニング技能士取得
平成25年1月
弁護士法人ユスティティア設立
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