Q 特定の株主から自社株買取の要望がありました(非上場株式です)が,会社自ら買い取る方法は法律上の規制があるので,現経営者が他の株主から自社株式を買取りたいと思います。
何か問題がありますか。
A 当然のことながら,売主の承諾が必要です。
現経営者に資金が必要なこともいうまでもありません。
問題は,買取価格の決定です。
大きく分けて3つの方法があります。
① 収益方式
収益方式とは,評価対象会社が将来獲得する利益又はフリー・キャッシュ・フロー(債権者や株主等の資金提供者に対する利払い,弁済又は配当に充てることのできるキャッシュ・フローのこと)を一定の割引率で割り引いた現在価値に基づき評価する方式です。
具体的には,利益に基づいて評価を行う収益還元方式やフリー・キャッシュ・フローに基づいて評価を行うディスカウンテッド・キャッシュ・フロー方式(DCF方式),株主が評価対象会社から将来獲得することが期待される配当金に基づいて評価を行う配当還元方式などがあります。
② 純資産方式
貸借対照表上の資産から負債を控除して求めた純資産価額に基づいて,株式の価額を評価する方式です。
具体的には,簿価に基づいて行う簿価純資産方式と時価に修正して行う時価純資産方式があります。
③ 比準方式
対象会社と類似する上場会社(類似会社又は類似業種)の株式の市場価額や,対象会社の株式の過去の取引における価額を参考として評価する方式のことです。
具体的には,対象会社に類似する特定の上場会社の市場株価等を参考として評価する類似会社比準方式,対象会社に類似する業種等の上場会社の市場株価等を参考として評価する類似業種比準方式,対象会社の株式の過去の取引における価額を参考とする取引事例方式があります。
税法上の取扱
相続税法上の評価では,評価する株式の発行会社を従業員数,総資産価額及び取引金額によって,大会社,中会社,小会社のいずれかに区分(財産基本通達178)して,会社の規模に応じて,当該区分ごとに財産評価基本通達に定められた「類似業種比準方式」若しくは「純資産価額方式」により評価するか,又は両方式を一定の割合により併用して評価しています(財産基本通達179)。
所得税法上は,所得税基本通達に定めがあり,売買実例のある場合,公開途上にある株式の場合,売買実例のないもので類似会社の株式の価額のある場合については,規定がありますが,これらの方法で評価が困難な場合には,「原則として」,一定の条件の下に,財産評価基本通達178から189-7までの「取引相場のない株式の評価」によって評価することが認められています(所得税基本通達59-6)。
正式には鑑定が必要となりますが,鑑定価額も高額な上,価額に不満がある場合には合意ができず,鑑定合戦ともなりかねないため,協議で双方が納得できる合理的な金額で取り決めることが多いと思います。
会社が買い取る場合も買取価格については同様の問題があります。