Q 社員の横領が発覚し懲戒解雇することになりました。当該社員は懲戒解雇に異議はありませんが,この場合も解雇予告期間を設けるか,解雇予告手当を支払わなければなりませんか。
A 労働基準監督署長の除外認定があれば,即時解雇は可能で,予告期間も予告手当も必要ありません。
そうでなければ,懲戒解雇であっても予告期間を設けるか,予告手当を支払わなければなりません。
解雇予告制度とは
手続的には,
「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。」
とされている点に注意が必要です。
これを解雇予告制度(労基法20条1項)
といいます。
「平均賃金」とは,
解雇通告日直前3ヶ月間に支払われた賃金総額÷3賃金計算期間の暦日数
のことです(労基法12条)。
たとえば,20日前に予告したというような場合は,解雇の日までの20日分の日割り賃金と,10日分の解雇予告手当を払うことになります。
除外認定とは
労基法20条3項は,「前条第2項の規定は,第1項但書の場合にこれを準用する。」としているので,労基法20条1項但書の懲戒解雇の場合であっても,行政官庁の認定が必要であり,労働基準監督署の除外認定が必要であることに変わりはありません。規定の仕方がとてもわかりにくくなっています。
厚労省の認める認定除外の要件は,下記のとおりです。
① 会社内における窃盗、横領、傷害等刑法犯に該当する行為があった場合
② 賭博や職場の風紀、規律を乱すような行為により、他の従業員に悪影響を及ぼす場合
③ 採用条件の要素となるような経歴を詐称した場合
④ 他の事業へ転職した場合
⑤ 2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合
⑥ 遅刻、欠勤が多く、数回にわたって注意を受けても改めない場合
予告期間も予告手当の支払いもなく,即時解雇をした場合の効力
「使用者が労働基準法20条所定の予告期間をおかず、また予告手当の支払をしないで労働者に解雇の通知をした場合、その通知は、即時解雇としては効力を生じないが、使用者が即時解雇を固執する趣旨でないかぎり、通知後30日の期間を経過するか、または解雇予告手当の支払をしたときに解雇の効力を生ずるものと解すべきである。」とされています。
細谷服装事件・最高裁第二小法廷昭和35年3月11日判決・民集第14巻3号403頁