有責配偶者からの婚姻費用請求

どのような問題か

有責配偶者とは,自ら離婚原因を作って婚姻関係を破綻させた者をいいます。

 

有責配偶者から,他方配偶者に対して「離婚」を請求することは原則として認められないことは,有責配偶者からの離婚請求のページで解説した通りですが,それでは,有責配偶者から,他方の配偶者に対して,離婚するまでの間の「婚姻費用」(生活費)を請求することはできるのでしょうか。
 

 

想定されるケース

相談者Aさん(男性)
妻が浮気をして,浮気の証拠もあり,はっきりしています。妻は,私が浮気をしたことを指摘すると,子どもを連れて出て行ってしまいました。

 

しかもその後に,私に対して,婚姻費用(生活費)を払えと請求をしてきたのです。私は,浮気をされて子供も取られたうえに,妻に対して生活費まで支払わないといけないのでしょうか。
 

 

弁護士の解説

有責配偶者から,他方の配偶者に対して婚姻費用を請求することができるかどうかについては,裁判例は多くありませんが,
①有責配偶者自身の婚姻費用を請求することはできなません。
(但し,生活に困窮している場合には,生活保護費相当額の支払を命じられることがあります。)

 

②子どもの監護費用に相当する部分の婚姻費用を請求することはできる。
とする裁判例が見受けられます。
したがって,上記のケースについては,
「妻の生活費相当額は支払わなくてもいいか,支払うとしても生活保護費相当額で足りるとされる可能性があります。しかし,子供の監護費用に相当する婚姻費用は,支払わなければならない可能性が高いです。」
という回答になるでしょう。
 

 

裁判例について

1 東京家庭裁判所平成20年7月31日審判(家裁月報61巻2号257頁)

【判旨】
勤務先の同僚と不貞関係を結び,夫と別居して同僚宅で暮らす妻から夫に対して婚姻費用の分担を請求した事案において,別居の主な原因が妻の不貞行為にある場合には,妻は,自身の生活費に当たる分の婚姻費用分担請求は権利の濫用として許されず,ただ同居の未成年の子の実質的監護費用を婚姻費用の分担として請求しうるにとどまる

 

【解説】
妻と相手の男性の浮気が証拠上はっきりしているケースで,妻が生活費相当額の婚姻費用の請求を夫に対して行ったことは「権利の濫用」であるとされ,子どもの監護費用に相当する金額だけ支払えばよいものとされました。
 

 

2 名古屋高裁金沢支部昭和59年2月13日決定(判タ528号301頁)

【判旨】
① 未成熟の二子に対する養育費の負担については,別居の責任が夫婦のどちらにあるかにかかわらず,子供が親と同程度の生活を保持するための費用を分担する義務があるものであるが,別居につき責任を有する配偶者である妻自身の生活費については,夫の分担義務を定めることは相当でない
② 別居後間もない時期で,無収入の妻がみずから稼得する途を探求するなど生活の建直しに少なくとも必要かつ相当な期間については,妻自身の生活費の分担として,生活保護法による生活扶助基準月額金3万8270円の割合の金員は夫に負担させるのが相当である。
③ それ以降の期間については,妻が収入を得るに至った昭和58年8月以降,妻自身の生活費の分担を夫に求める申立の部分は認めることができない。

 

【解説】
妻と相手の男性の浮気が証拠上はっきりしているケースで,子どもの養育費については,夫婦の離婚の責任がどちらにあるかということとは無関係なので,有責配偶者から請求することもできるが,妻自身の生活費については,そのまま請求を認めるのは相当ではない,という判断です。
ただし,妻自身の生活費についても,一切認めないというわけではなく,別居後間もない期間で生活を立て直すために必要な期間中は,生活保護費相当額の請求をすることはできる,という判断をしています。
 

 

3 大阪高判昭和41年5月9日決定・家月18巻12号37頁

【判旨】
「別居原因が夫婦のうちのいずれの側の責任に帰すべき事由によつて生じたかの如きは,右費用(注;婚姻費用)の支給を受くべき側が故なく同居を拒む等の行為によつて費用の支給を受くべき権利を喪失又は放棄したと認められる場合等は別として,原則として,右支給を受ける権利又は右支給をなすべき義務の存否及び数額に影響を及ぼすものではない」

 

【解説】
この事案は,決定文からは浮気があったとの事実が記載されておらず読み取れません。単に夫婦の不仲が原因で,夫の方が2人で住んでいた家を飛び出し,妻が婚姻費用の請求をしたという事案のようです。
このような事案で,妻が「(婚姻)費用の支給を受くべき権利を喪失又は放棄したと認められる場合等は別」ですが,そうでなければ,婚姻費用を請求できるかどうか及び請求金額に影響することはない(つまり婚姻費用を請求することができる。),という判断をしました。
本決定は,そもそも,夫婦のどちらが有責配偶者であるのかについて判断していないものと考えられ,その意味では「有責配偶者からの婚姻費用の請求が認められるか」というテーマとは外れるかもしれません。
 
 

 

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