労災保険について

1. 労災保険とは?

労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」といいます。)に基づいて制定された制度です。
業務災害又は通勤災害により労働者が負傷した場合,疾病にかかった場合,障害が残った場合,死亡した場合等について,被災労働者又はその遺族に対し所定の保険給付が行われます。
 
業務災害とは,労働者が就業中に,業務が原因となって発生した災害のことです。

 

「業務上」の災害というためには,「業務起因性」を要し,単なる条件関係があるだけでは足りないとするのが,行政解釈及び判例です(最高裁第二小法廷昭和51年11月12日判決・判時837号34頁)。業務に内在する危険が原因となって発生した災害であれば,営利責任や危険責任の見地から,事業者が労働基準法上の保証責任を負うのが妥当であり,保険給付の対象となるという考え方に基づきます。

 

また,行政解釈上,「業務上」の災害というためには,「業務遂行性」と「業務起因性」の2要件で判断されています。
事故等の突発的事態から死亡,負傷,疾病が生じた場合(事故性傷病)には,「業務遂行性」を前提として,「業務起因性」があることが必要となります。

 

通常の労働過程自体から疾病が生じた場合(非事故性傷病=職業病)では,職業病リスト(労基法75条2項,労基法規則35条の別表1の2)に列挙された業務に従事し,有害因子に暴露された事実,対応する疾患と有害因子への暴露と発症の時期との間及び症状の経過が医学的に矛盾しなければ,業務起因性が推定されます。

 

過労死や過労自殺については,厚生労働省の行政解釈(認定基準)があるほか,裁判例が集積しています
 
通勤災害とは,通勤中に交通事故被害にあったような場合のことです。
 
労働者が業務中や通勤中に怪我・負傷や疾病,障害を負った場合に労災保険が給付されます。

 

 

2.労災補償制度との関係 

本来,被災労働者や遺族は,債務不履行や不法行為に基づき損害賠償を請求できる場合がありますが,使用者の過失又は注意義務違反が必要で,労災との間の因果関係,損害の立証もそれぞれ必要とされ,被災労働者に過失があれば,過失相殺の問題も生じます。

 

そこで,こういう点を克服するために設けられたのが労働基準法上の労災補償制度(労基法75条~88条)であり,
① 使用者の無過失責任,
② 逸失利益,休業補償,医療費等の損害のみが対象となり,衣類などの物的損害や慰謝料は対象とならない,
③ 保証は療養補償を除き,損害の全額ではなく,平均賃金に対する定率によって算定されること
を特徴とします。
 
しかし,使用者に支払い能力がない場合には,条規の労災補償制度でも実効性がありません。そこで,同法の限界を補うものとして設けられたのが労災保険制度です。
 
労災保険法1条は,「業務上の事由又は通勤による労働者の負傷,疾病,障害,死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため,必要な保険給付を行い,あわせて,業務上の事由又は通勤により負傷し,又は疾病にかかつた労働者の社会復帰の促進,当該労働者及びその遺族の援護,労働者の安全及び衛生の確保等を図り,もつて労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。」と定めています。

 

 

3.労災上の後遺障害 

後遺症が残った場合や,死亡した場合,災害を受けた労働者またはその遺族に対して,労災の後遺障害の等級に応じて,決められた基準で金額が支給されます。
(障害保障給付の額についてはこちら
(労働者災害対策保険法施行規則についてはこちら
 

 

4.労災保険関係について 

労働者を使用する全事業(個人経営の農業,水産業で労働者数5人未満の場合,個人経営の林業で労働者を常時には使用しない場合を除きます。)は,適用事業として労災保険法の適用を受けることになり(労災保険法2条),加入の手続をとり(保険関係成立届の提出),保険料を納付しなければなりません。保険料は全額事業主負担とされています。

 

但し,国の直営事業,非現業の官公署,特定独立行政法人,船員保険の被保険者は不適用事業とされ,特別法による別制度の対象となっています(国家公務員災害補償法,地方公務員災害補償法,船員保険法)。
加入は事業場ごとに行うもので労働者ごとではありません。したがって適用事業場に使用されている労働者であれば誰でも,業務上災害又は通勤災害により負傷等をした場合は保険給付を受けることができます。

 

事業が開始された日に労災保険関係が自動的に成立する(労災保険徴収法3条)ので,事業者が故意・過失により届出を怠った期間中に生じた事故等については,一定限度で保険給付に要した費用を当該事業主から徴収することができるとされています(労災保険法31条1項1号)。
労働者とは,正社員のみならずパート,アルバイト等,使用されて賃金を支給される方すべてをいいます。
 

 

5.健康保険との関係 

労働者の負傷,疾病等に対する保険制度としては,労災保険のほかに健康保険がありますが,健康保険法では,労働者の業務以外の事由による疾病,負傷,死亡等に関して保険給付を行うと定められており,業務上災害について健康保険による給付を受けること(健康保険被保険者証を提示して治療を受けるなど)はできません。
 

 

6.当事務所へご相談ください。 

業務中の災害や通勤中の災害を問わず,労働災害が発生した場合には,治療費や休業補償,障害補償,遺族補償といった問題が出てきますが,こうした費用の負担は膨大な金額になる場合もあります。

 

弁護士にご依頼をいただくことによって,労災の被害にあわれた労働者の方が,適切な補償を受けるためのサポートをいたします。適切な後遺障害の等級を獲得することはもちろん,事業主の安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求についても,対応が可能です。
また,労働者ばかりではなく,労災事故に関する請求を受けた会社側においても,適切な対応についてアドバイスが可能です。
 
労災事故については,まずは当事務所にご相談ください。
 

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