新型コロナウイルス対策について


新型コロナウィルスの対策として,当事務所では,お客さまならびに弊所スタッフの健康と安全を考慮し,インフルエンザ及び新型コロナウイルスの発生に伴う感染予防措置として,一部弁護士及びスタッフのマスク着用を実施しております。
 
これは予防の一環であり,体調不良等によるマスク着用ではございません。
 
厚労省は,風邪症状があれば,外出を控えていただき,やむを得ず,外出される場合にはマスクを着用していただくようお願いしますというご案内をしています。
以下は,関連する法律問題についてまとめてみました。

 

新型コロナウィルスと有給休暇について


1 従業員が新型コロナウィルスかどうかわかりませんが,発熱があるため,年次有給休暇を取得して会社を休むことについて 
 年次有給休暇は,原則として労働者の請求する時季に与えなければならないものですから,理由を問わず取得することは可能です。
 2019年4月からは,年10日以上の有給が付与される労働者に年5日の有給を取得させることが使用者に義務付けられています。守らない場合には罰則があります。
 
2 企業が感染拡大を防止することを理由に社員に無理やり年次有給休暇を取得させることについて
 年次有給休暇は,あくまで労働者自身が求めたときに企業が与えなればならないものですので,会社側が有休を取らせることを強要することは違法です。
 

新型コロナウィルスと休業手当について


3 新型コロナウィルスか不明だが,37.5度以上の発熱の症状を示した社員に業務命令(休業命令)で帰宅させることについて
 当該社員に対する関係でも,他の労働者に対する関係でも,会社は健康配慮義務および安全配慮義務を負っていますので,それに基づくものとして、労働者に対して本件出社拒否(休業命令)を発出する裁量権を有しているとされています(東京地裁平成5年9月21日判決・判タ835号199頁)。
 
4 会社の指示で仕事を休ませた場合の賃金の支払い義務について
 これは,民法上の危険負担の考え方によって,規律することになります。
 民法536条1項では,「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは,債務者は反対給付を受ける権利を有しない。」としています。また,同条2項は,「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは,債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。」としています。
 そして,労働基準法26条では,使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には,使用者は,直近3か月間の賃金総額をその期間の総日数で割った平均賃金の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないと定めています。違反した場合は30万円以下の罰金が科せられます。
 不可抗力による休業の場合は,使用者の責に帰すべき事由に当たらず,使用者に休業手当の支払義務はありません。不可抗力とは、①その原因が事業の外部より発生した事故であること,②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2つの要件を満たす必要があります。
 
ア 社員が新型コロナウイルスに感染したことを理由とする場合
 新型コロナウイルスに感染しており,都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合は,新型コロナウィルスが国の指定感染症に指定されているので,「債権者(使用者)の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられ、休業手当を支払う必要はありません。
 
イ 新型コロナウイルスへの感染が疑いがあるがはっきりしていない場合
 まずは厚労省の指定する「帰国者・接触者相談センター」でご相談下さい。
 その結果,新型コロナウィルスであると判断されず,職務の継続が可能である場合について,会社の自主的判断で休業させる場合には,「債権者(使用者)の責に帰すべき事由による休業」に該当するとされることが一般的で,その場合には休業手当を支払う必要があります。

ウ 会社の指示で感染の有無を問わず休ませる場合
 会社の自主的判断で休業させる場合ですので,「債権者(使用者)の責に帰すべき事由による休業」に該当するとされることが一般的で,その場合には休業手当を支払う必要があります。

エ 新型コロナウイルス感染症によって,事業の休止などを余儀なくされ、やむを得ず休業した場合
 当該取引先への依存の程度,他の代替手段の可能性、事業休止からの期間,使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に判断して不可抗力といえれば,休業手当を支払う必要はありません。

5 社員が発熱などの症状があるため自主的に休んだ場合
 新型コロナウイルスかどうか分からない時点で、発熱などの症状があるため労働者が自主的に休まれる場合は、「債権者(使用者)の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられ、休業手当を支払う必要はありません。通常の病欠と同様で,会社に病気休暇制度があればそれを利用できますし,被用者保険に加入していて一定の条件を満たせば「傷病手当」が支給されます。有給休暇を社員の希望で使うことができるのは,1で述べたとおりです。
 

新型コロナウィルスと休校対応


6 政府の休校要請を受けて、子供の世話で仕事を休まざるをえなかった場合の対応について
 正規・非正規を問わず,助成金で対応することになります。
 新型コロナウイルス感染拡大防止策として,臨時休業した小学校等に通う子または,風邪症状など新型コロナウイルスに感染したおそれのある、小学校等に通う子の世話を行うことが必要となった労働者に対し,労働基準法上の年次有給休暇とは別途,有給の休暇を取得させた事業主に対し,休暇中に支払った賃金相当額全額(但し,8330円を日額上限とする)を助成することになりました。
 令和2年2月27日から3月31日の間に取得した休暇に限られます。
 

新型コロナウィルスと契約の履行期の遅延


7 発熱が生じた多数の従業員の欠勤に基づく従業員不足により,契約上の履行期までに商品完成ができず,納品できなかった場合の契約上の責任
 
8 中国からの部品供給をもとに工場生産をすることになっているが,代替部品を得られず,契約上の履行期までに商品完成ができず,納品できなかった場合の契約上の責任
 
いずれも不可抗力といえるか,債務不履行の発生原因である債務者の責めに帰すべき事由といえるかという問題に帰着します。
こういう事態を想定して契約書上に責任のあり方を規定していれば,それによりますので.まずは基本取引契約書を見直していただく必要があります。
 
新型コロナウィルスが仮にパンデミック期に入った時期においても,会社が必要な事業継続対策を講じていたが,会社に帰責事由がないにもかかわらず、商品完成ができなかったという事態であれば,法律上の責任はないといえますが,7のケースでは,臨時のアルバイトを雇うなどすることもできると考えられますし,8のケースでも,他からの部品調達ができないかといったことが問われてきます。さらに,他企業に対する受注の方途を講ずる等,客観的にみて通常なすべきあらゆる手段を尽くしたと認められる場合でない限り,不可抗力とはいえない場合が多いであろうといえます。
 
取引先との関係が良好であれば,取引先との協議により,了解をもらって対処方策を検討するということは実務的にはあり得ますが,この場合であっても合意内容を文書化しなければ新たな紛争のトラブル原因となってしまいます。
 
以上のように複雑多岐な問題が発生しますので、お困りの際は弁護士法人ユスティティア森本総合法律事務所までお尋ねください。