商事留置権の「物」に不動産は含まれるか(積極)

最高裁判所第一小法廷平成29年12月14日判決・民集第71巻10号2184頁,判時2368号30頁,判タ1447号67頁,金商1540号22頁,金商1556号2頁(商事判例研究・山下眞弘)
 

【判決の概要】

不動産は,商法521条が商人間の留置権の目的物として定める「物」に当たるかについて,最高裁は,同条にいう「物」に当たると判断しました。
 

【事案の概要】

 X(生コンクリートの製造等を目的とする会社)は,平成18年12月,Y(一般貨物自動車運送事業等を目的とする会社)に対し,X所有の本件土地を賃貸して引き渡しました。上記賃貸借契約は,平成26年5月,Xからの解除により終了しました。Yは,上記賃貸借契約の終了前から,Xに対し,Xとの間の運送委託契約(Xが製造した生コンクリートをYが委託運搬し,XがYに対して運搬手数料を支払う契約)によって生じた弁済期にある運送委託料債権を有しています。
 Xが,Yに対し,所有権に基づく本件土地の明渡し等を求めたのに対し,Yは,本件土地について,上記運送委託料債権を被担保債権とする商法521条の留置権が成立すると主張して,Xの請求を争いました。
 

【判決の要旨】

「不動産は,商法521条が商人間の留置権の目的物として定める「物」に当たると解するのが相当である。」
その理由として次のように述べています。
「・・・民法は,同法における「物」を有体物である不動産及び動産と定めた上(85条,86条1項,2項),留置権の目的物を「物」と定め(295条1項),不動産をその目的物から除外していない。一方,商法521条は,同条の留置権の目的物を「物又は有価証券」と定め,不動産をその目的物から除外することをうかがわせる文言はない。他に同条が定める「物」を民法における「物」と別異に解すべき根拠は見当たらない。
また,商法521条の趣旨は,商人間における信用取引の維持と安全を図る目的で,双方のために商行為となる行為によって生じた債権を担保するため,商行為によって債権者の占有に属した債務者所有の物等を目的物とする留置権を特に認めたものと解される。不動産を対象とする商人間の取引が広く行われている実情からすると,不動産が同条の留置権の目的物となり得ると解することは,上記の趣旨にかなうものである。」
 

【コメント】

1 商事留置権(商法521条)とは何でしょうか?

 ①当事者双方が商人であり,②商行為によって生じた債権が弁済期にある場合,③債権者は商行為により自己の占有下にある,④債務者所有の有価証券又は「物」を,⑤弁済を受けるまで留置することができるという担保物権です。
 

2 民法上の留置権(民法295条)との違いは?

 ①民法上の留置権の場合,債務者所有である必要はありません。
 ②民法上の留置権の場合,留置物と被担保債権との牽連性を必要としますが,商事留置権は牽連性は不要です。
 ③民事上の留置権の場合,債務者が破産すると留置権は消滅しますが(破産法66条3項),商事留置権は特別の先取特権として存続します(破産法66条1項)。
 

3 本判決の射程距離

 本判決は,「土地に抵当権が設定された後,商人たる当該土地の所有者が建築業者との間で当該土地上に建物を建築する請負契約を締結し,建物完成の前後に当該土地について競売開始決定がなされたところ,建築業者がその土地所有者による請負代金未払いを理由に,当該土地についての商事留置権を主張した」というような抵当権と留置権衝突事案における抵当権者との利害調整のあり方について判断を示したものではありません。
 
 ④の要件である,「物」に不動産が含まれるとしても,②の要件である,商行為によって生じた債権でなければならないところ,敷地の占有取得の原因となる商行為が存在しないことを理由に敷地に対する商人間留置権の成立を否定する見解や,③の要件である,商行為により「自己の占有下」にあることが必要なところ,建築請負業者の敷地に対する占有取得を否定する見解が提唱され,同趣旨の下級審裁判例も多数存在するところです(東京高裁平成11年7月23日決定・金法1559号36頁など)。
 
 学説では,敷地に対する商人間留置権の成立を認めつつ,原則として登記の先後により抵当権者と留置権者の利害調整を図るべきとする見解もあります。
 さらに,敷地に対する商人間留置権の成立を認め,商人間留置権を主張する債権者が抵当権者に対し留置権を主張し不動産の引渡しを拒絶し得ると解した上で,問題となった事案の事実関係を踏まえ抵当権者と商人間留置権を主張する留置権者との和解による解決の余地を残すべきとの見解も提唱されています。(江頭憲治郎「商取引法の基本問題」(有斐閣・2011年)注3)56頁,小林明彦「建築請負代金未払建物をめぐる留置権と抵当権」金法 1411号27頁参照)。
 

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