遺留分減殺請求を行使し裁判で遺留分を認めてもらった事例


相談内容

被相続人Aさんは、公正証書遺言を作成し、Aさん所有の土地(不動産1、2)をAの次女Y1さんに、同じくAさん所有の土地(不動産3、4)を孫のY2さんに遺贈する旨の遺言をしました。(Y1さんとY2さんは親子関係にあります)
 Aさんが死亡し、Y1さん、長女X1さん、長男X2さんが法定相続人となりました。公正証書遺言がX1さん、X2さんの遺留分を侵害するものであったため、X1さんとX2さんは、遺留分減殺請求権を行使する旨の意思表示をし、弁護士を通じて協議をしましたが、調わないので、訴訟提起に至りました。
 
 

争点

お互い主張を繰り返し、争点は以下の2点に絞られました。
  • 特別受益
X1さん、X2さんはAさんの夫(2人にとっては父にあたります)から貸付を受けており、返済を行っていませんでした。Y1さんらは、夫婦2人で自営業を営んでいたこと、お金を返済する約束はあったものの時効期間を経過して返さないでよくなっていたため、Y1さんらは生前贈与にあたるとして、特別受益になると主張しました。
 
  • 不動産の価格
今回の遺留分は各不動産の6分の1を登記してもらうよう請求していましたが、相手方は価格賠償をするとの主張でした。価格賠償の場合、不動産の価格がいくらになるかを算定するのですが、土地に立っている建物の状況などによって減価されることがあります。
今回の場合、Y2さんの相続した不動産3の上には,Y2さん所有のアパートが建っており、隣接不動産4はその駐車場部分になっていました。
不動産3、4にはY2さんのためにAさんの生前、銀行の住宅ローンが抵当権設定がされていました。Y2さんは、不動産の価値から住宅ローン分の債務を減らすべきであると主張しました。
 

弁護士の提案内容

  • 特別受益について
そもそもこの貸付金はAさんの夫からX1、X2さんに対するものであり、今回遺留分の対象となっている被相続人であるAさんに関するものではありません。また貸金返還請求権を相続したからといって、債権が存在するだけであり、さかのぼってAさんが貸し付けたことにはならないので特別受益にはあたらないと主張しました。
また、民放903条第1項は、特別受益を、贈与・遺贈という特定の相続人に対して無償で財産を与えることに限定しています。したがって、返還約束があり、かつ金利の定めまである消費賃借は、無償ではないから、消費賃借について民放903条を適用することはできないと主張しました。
 
  • 不動産の価格
Y2さんは職業も安定しており、支払能力には問題がないこと、対象物件はアパートと駐車場であり、収益物件で定期的に収入があることからすると、抵当権が実行される可能性は極めて低いので債務を控除することはできないと主張しました。
 
 

結果

X1、2さんらの主張が概ねとおり、判決では遺留分が認められて代償金の支払いがなされました。
 

弁護士の所感

本件の場合、法律的には、物上保証の場合,抵当権付債務を控除するのかという点が問題になりました。
「遺留分は実質的な価値であり、形式的には遺産を構成する権利であっても、例えば回収不能の債権は除外されるのであり、不動産の評価額を決するに当たっても、抵当権が実行される可能性や求償可能性を考慮した実質的判断は十分にあり得るもの」(西森英司「遺留分減殺の事例におけるいくつかの論点について」判タ1042号59頁)とされています。
また、特別受益に関する相手方の主張はユニークなものでした。


(平成31年4月15日原稿作成 担当弁護士 森 本 精 一)
 

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