民事再生

民事再生は、債務超過などにより経営危機にある企業が、裁判所の関与の下で再建を図る手続です。
平成12年4月1日から施行されている民事再生法は、未だに「倒産扱いされる」等の誤解が多いのですが、全国的に実績があり、多くのメリットがある会社再建の方法です。
 
民事再生の最大のメリットは、事業にもよりますが債権者の同意を得られれば、債務を大幅に圧縮できる場合があることです。圧縮後の債務については、原則として10年以内に圧縮された債務を延べ払いする方法をとります。当然、債務が大幅に圧縮されれば、日々の返済負担は軽減され、資金繰りは相当程度楽になります。

 

また、民事再生の場合、私的再建と違って、債権者の過半数が賛成すれば再建計画が成立しますので、債権者の中にある程度の反対者がいても再建が可能になります。
 
民事再生手続における再生計画案のポイントは、第一に「営業利益段階で黒字計上できるかどうか」です。つまり、仮に無借金であるとしたら、会社経営は大丈夫か、それとも駄目か、です。

もちろん、これは現状で黒字計上できるかどうかだけでなく、経費節減やリストラなどで、近い将来黒字計上できるかどうか、といった判断も含まれます。これができるのであれば、民事再生法を活用して、再生できる可能性があります。

 

① 民事再生とは?

民事再生とは、民事再生法にしたがって、裁判所や監督委員の監督のもと、従前の経営者に財産の管理処分権や業務遂行権限を認め、主体的に手続に関与し、企業の再建を図っていくというDIP(Debtor In Posession[占有債務者のこと])型の手続です。

 

② 民事再生の手続概要

裁判所へ再生手続開始申立がなされると、債務の弁済禁止などを内容とする保全処分命令の発令とともに監督委員が選任されるのが原則的運用です(民事再生法54~61条)。監督委員は、再生手続開始の要件の審査を行い、債権者説明会等の状況を踏まえて再生手続開始が相当か否かの意見書を裁判所に提出し、裁判所はこの意見書に基づいて再生手続の開始を決定します。

 

開始決定の後、債権届出・調査などの債権調査手続や財産目録・貸借対照表の作成など財産状況の調査を進め、届出期間の終了後に再生計画案を作成して裁判所に提出します。監督委員がこの再生計画案についての意見書を提出し、債権者の書面決議又は債権者集会における決議で承認され、裁判所が認可すれば、その再生計画が確定します。

 

再生計画の可決要件は、議決権を行使することができる届出再生債権者で出席した者の過半数で、かつ、議決権を行使することができる届出再生債権者の議決権の総額の2分の1以上の同意があることが必要とされています(171条4項、172条3項)。これは和議法上の出席者の過半数かつ債権額の4分の3という要件が厳しすぎたのでそれを緩和化したものです。

 

再生計画が不認可になったときなどには、裁判所は、破産の原因である事実があると認めるときは、職権で、破産法に従い、破産の宣告をすることができるようになっています(16条1項)。

 

③ 民事再生の特徴

a. 自主後見的な手続であること

再生債務者は、手続開始決定後も財産管理処分を失わず(38条1項)、原則として手続申立後も債務者が経営を継続することができます。米国倒産法第11章と同じ手続を採用したものです。法的に経営権の継続ができない会社更生との違いです。

 

b. 柔軟で多様な手続であること

法律上は原則的にDIP型とされていますが、運用上は監督委員の選任されるケースが原則型となっています。監督委員は、再生債務者の業務を監督し、重要事項の決定を行う場合の同意権を有しており、そのことで手続に対する債権者の信頼を確保し、円滑に手続を進めることが可能になります。また、管財人の選任(64条)による管理型の選択も可能とされています。

 

また、債権調査確定制度を簡易化するべく、簡易再生手続(200条)や同意再生手続(206条)を導入しています。
債権者集会も任意化され、書面による報告を充実しています(114条、125条、126条)。
 

c. 申立原因を緩和したこと

民事再生法では、再生手続開始の要件を「破産原因たる事実の生ずるおそれがあるとき」と「事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき」に手続が開始できるようにし(21条)、破産要件がなくても申し立てられるようにして、破綻前救済を可能とした上、申立と同時に再生計画案を申立と同時に提出することを要しない(163条1項)こととして、迅速かつ機能的に手続が開始できるようにしています。

 

d.担保権に対する制約を設けたこと

担保権行使そのものを制限する規定はなく、担保権者は担保権の行使が可能ですが、担保権の実行により事業継続に必要な資産が換価されて再建が困難になるような場合には、担保権の実行としての競売手続の中止命令(31条)や担保権消滅制度(148条)を設けました。こられにより事業継続のための重要財産が逸失し、債権が頓挫することを防止できるようになりました。
 

e. 決議要件を緩和したこと

再生計画の可決要件は、議決権を行使することができる届出再生債権者で出席した者の過半数で、かつ、議決権を行使することができる届出再生債権者の議決権の総額の2分の1以上の同意があることが必要とされています(171条4項、172条3項)。これは和議法上の要件が厳しすぎたのでそれを緩和化したものですが、和議法下においても、実務上は、積極的に反対しないが、法律の規定により賛成することはできない政府系金融機関が大口債権者である場合にも、和議法では債権届出をしなくても失権しないが届出の有無を問わず和議条件が認可確定すると和議条件どおり権利が変更されるという制度を利用して債権届を控えていただくという方法で要件を満たす工夫をしていました。

 

また、会社更生法の3分の2(会社更生法205条)より決議要件をはるかに緩和しており、手続の成立を容易にしています。
 

f. 債権調査・確定手続を設け、手続負担を軽減したこと

再生債権者が届出をした債権について、再生債務者及び他の債権者の認否・調査を経て確定する手続と、再生債権者が届出をしなくても再生債務者が自認する手続があり、これらの債権のみが再生債権として認められます。和議法では、債権表に債務名義性もなかったのに対し、債権調査・確定手続を経て再生計画に記載された債権に執行力を与える前提として、債権調査・確定手続を設けつつ、その手続負担を軽減するべく、書面による異議手続(100~103条)、査定手続(105条)等が新設されました。

 

なお、債権者が開始決定を知りながら、債権届出をしない場合には、
①再生債務者が知っていて、認否表に記載しないときは、認可計画の結果計画による一般的権利変更条項により権利変更を受けますが、弁済は計画による弁済後となり(181条1項、2項)、強制執行力もありません(181条3項)。
②再生債務者も知らず、債権者が届出もしなければ、計画認可の結果免責となります(178条)。
したがって、債権者としては債権届出が必須ですのでこの点の注意が必要です。
 

g. 充実した履行確保手続

裁判所の監督期間は、監督委員が選任されたときは3年経過したときまで、再生計画履行の監督を行います(186条2項)。監督委員による履行確保措置の手段(188条2項、3項)、再生計画の履行を怠ったときの再生計画の取消を設けています(188条1項2号)。

 

h.破産への移行手続があること

決議に足る再生計画案作成の見込みがないときや再生計画案が認可されないとき、再生債務者が再生計画の履行を怠ったときなどには、裁判所が職権で破産に移行できることになっています(16条1項)。

 

裁判所へ納める予納金
予納金基準額(長崎地裁の場合)
負債総額 予納金基準額
5,000万円未満 200万円
5,000万円~1億円未満 300万円
1億円~10億円未満 500万円
10億円~50億円未満 600万円
50億円~100億円未満 700~800万円
100億円~250億円未満 900~1,000万円
250億円~500億円未満 1,000~1,100万円
500億円~1,000億円未満 1,200~1,300万円
1,000億円以上 1,300万円
 
とにかく、早い段階でご相談いただいた場合は、再生の道が開かれことも多いのです。厳しい経営状況をつまびらかにするのは気が進まないお気持ちは良く分かりますが、取り返しがつかない状況に陥る前に、できるだけ早い段階で弁護士法人ユスティティア森本綜合法律事務所にご相談ください。
 

Top5.jpg


他の記事はこちらをご覧ください。


 

再生・倒産に関する他の記事はこちら

再生・倒産

リスケジュールによる自主再建

民事再生

会社破産

M&A・企業再編