取締役なら考えておくべき株主代表訴訟の実務

 

1 株主代表訴訟に対する対策

 
① 会社の経営について,襟を正し,誠実に,かつ,慎重に職務を執行する。
 
② 取締役会を開催し,経営判断については,調査・検討資料を保存し,議事録に記載する。
 
③ 経営判断に際し,弁護士や専門家の意見を聞く
 
④ 監査機能を充実させ,不祥事を起こさない。
 
⑤ 取締役等の役員は,役員研修会において,会社法等の勉強をし,違法行為をしないようにするほか,コンプライアンス体制に努める。
 
⑥ 役員の責任が発生しないよう内部統制システムを確立し,その機能を充実させる。
 
⑦ 取締役個人が代表訴訟の被告とされるために,会社を契約者,取締役を被保険者とする会社役員賠償保険に加入しておく。
 
⑧ 会社の顧問弁護士は,代表訴訟の被告となった取締役の代理人にはなれないので,顧問弁護士以外にも個人的に親しく優秀な弁護士を見つけておく
 
⑨ 明らかな濫訴としての代表訴訟については,担保提供を求めるほか,会社も補助参加して,全社的な支援のもとに闘う。
 
大会社ばかりではなく,中小企業においても,例えば,先妻の子供達と後妻や後妻の子供達との間での対立や実の兄弟間での争いといった内紛の要素がある場合には,代表訴訟のリスクが潜在的にあるといえます。
 
会社の分社化や株式の整理などの対応が必要であり,紛争が発生する前に早期に予防することが望ましいと思います。
 
紛争の長期化は,取引先の信用を失う結果ともなりかねず,経営者としては,戦略的な決断が必要となります。


2 会社法での株主代表訴訟の変更点


(1) 株主の資格


公開会社では6ヶ月前から引き続き株式を有する株主でなければ株主代表訴訟を提起できませんが(847条1項),非公開会社においては,この継続保有期間の要件が撤廃されました(同条2項)。
 

(2) 不適法な訴えの制限


「責任追及等の訴えが当該株主若しくは第三者の不正な利益を図り又は当該株式会社に損害を加えることを目的とする場合」は却下されます(847条1項但し書き)。裁判所は担保提供命令を命じるほか(同条7項),実質審理に入ることなく,不適法な訴えとして却下することができます。

具体的には,総会屋が訴訟外で金銭を要求する目的で提起した場合,株主が株式会社に対し事実無根の名誉毀損的主張をすることにより株式会社の信用を傷つける目的で提起した場合等です。
 

(3) 不提訴理由の通知制度の創設


株式会社が,取締役の責任について提訴請求を受けた場合に,60日以内に訴えを提起しなかったときは,当該請求をした株主等から請求により,当該請求をした者に対し、遅滞なく,責任追及等の訴えを提起しない理由を書面又は電磁的方法により通知しなければなりません(847条4項,施行規則218条)。

通知内容は,①株式会社が行った調査の内容(次号の判断の基礎とした資料を含む。),②請求対象者の責任または義務の有無についての判断及びその理由,③請求対象者に責任または義務があると判断した場合において,責任追及等の訴えを提起しないときはその理由となっています(施行規則218条)。

訴え提起に必要とされている,①被告となるべき者,②請求の趣旨及び請求を特定するのに必要な事実(施行規則217条)の記載を欠いた訴えの提起の請求は,適法なものといえないので,訴えを提起しない理由の通知は必要ありません。
 
(4) 株主でなくなった者の原告適格

株式交換や合併の対価が金銭であったり他の会社の株式である場合は,原告適格を失います。代表訴訟の結果により自己の財産の価値が左右されなくなるので,代表訴訟の真摯な遂行が期待できなくなるからです。この点については,変更ありません。

これに対し,株主でなくなった原因が株式会社の組織再編行為であり,かつその後も当該株主が一定の利害関係を有するときは,その者が訴訟を遂行することができるとの規定が設けられました(851条)。


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