長崎県弁護士会所属

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相続人への売渡請求

Q 株(譲渡制限のある株です)を相続した相続人に対し,会社から売渡をしたいと申し入れして,株の分散を図りたいのですが,何か注意すべきことはありますか。
A 会社は当然に売渡請求ができるものではなく,会社の定款に,会社からの売渡請求ができる旨の規定を置いておかなければなりません(会社法174条)。
 従来の定款にこの規定がない会社の場合には,新たに定款変更の株主総会の特別決議を行う必要があります(会社法466条,309条2項11号)。

特別決議とは

 特別決議は,株主総会で議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し,出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。 

解釈上の問題点

 相続発生後に会社が定款を変更して,会社が相続人に対し譲渡制限株式の当該会社への売渡しを請求できる旨の規定を新設した上で,相続人に対し,保有する譲渡制限株式の会社への売渡しを請求することが,可能かどうかについて,東京地方裁判所平成18年12月19日決定・資料版商事法務285号154頁および抗告審の東京高等裁判所平成19年8月16日決定・資料版商事法務285号148頁はこのような手法も許されると判断しています。
 また,会社が譲渡制限株式を一般承継により取得し準共有している共同相続人の全員に対して売渡請求をすることを要するのか,その一部に対して売渡請求をすることも妨げないのかについて,東京高等裁判所平成24年11月28日判決・資料版商事法務356号30頁(共和証券株主総会決議取消請求事件,最高裁判所平成25年10月10日決定で,上告棄却及び上告不受理)は,準共有者の一部に対しての売渡請求を認めています。 

その都度株主総会決議も必要

 会社は,上記の定款の定めにしたがって相続人から株を取得しようとする場合,その都度,株主総会の特別決議により,売渡の請求をする株式の数と,請求をする株式を有する者の氏名(または名称)を定めなければなりません(会社法175条)。

売渡請求

 会社は,株主総会の特別決議がなされた場合,請求する株式の数を明らかにした上で,当該決議において定められた相続人に対し,自己株式の売渡しを請求することができます(会社法176条1項本文,2項)。
 ただし,会社がこの売渡請求をすることができるのは,会社が相続等の一般承継があったことを知った日から1年以内に限られています(同条1項ただし書き)。 
 この売渡請求期間の起算日を,会社が当該株主の死亡の事実を知った日とするのか,相続による当該株主の保有株式が相続人に一般承継されたことを当該会社が知った日と解するのかについて,前掲東京地方裁判所平成18年12月19日決定,東京高等裁判所平成19年8月16日決定のいずれも前者であると判断しています。

価格の決定について

 価格の決定については,相続人に対する売渡請求制度によって会社に取得される自己株式の売買価格は,会社と一般承継人との間の協議により定められます(会社法177条1項)。
 しかし,合意形成は難しいため,合意に至らないこともあり得ます。
 そのため,会社または売渡請求を受けた相続人は,請求の日から20日以内に,裁判所に対し,売買価格の決定を申し立てることができます(同条2項)。 
 手続は複雑ですので,細かな手続の流れなど詳細については弁護士にご相談下さい。
この記事を担当した弁護士
弁護士法人ユスティティア 代表弁護士 森本 精一
保有資格弁護士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
専門分野企業法務、債務整理、離婚、交通事故、相続
経歴
昭和60年3月
中央大学法学部法律学科卒業
(渥美東洋ゼミ・中央大学真法会
昭和63年10月
司法試験合格
平成元年4月 最高裁判所司法修習生採用(43期司法修習生)
平成3年4月
弁護士登録(東京弁護士会登録)
平成6年11月
長崎県弁護士会へ登録換
開業 森本精一法律事務所開設
平成13年10月 CFP(ファイナンシャルプランナー上級)資格取得
平成14年4月
1級ファイナンシャル・プランニング技能士取得
平成25年1月
弁護士法人ユスティティア設立
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