長崎県弁護士会所属

弁護士歴30年、長崎県弁護士会会長を経験した代表弁護士をはじめ、4人の弁護士が対応します

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免責について

1 免責とは

個人破産の場合,当該破産者につき,免責許可決定が確定すると,当該破産債権が非免責債権に該当しない限り,破産者は,配当手続による配当金を除き,当該破産債権についてその責任を免れます(破産法253条1項)。

2 免責の法的性質

債権自体は存続するが,責任が消滅し,自然債務となると解されています。
自然債務とは,破産手続終了後,破産債権者は破産者に対して破産債務の履行を裁判で訴えることができませんが,破産者が免責後任意に弁済を行うことは有効な債務の弁済となり,破産債権者は給付保持力といって,そのままもらってよいという効果があります。したがって,破産者は,破産債権者に対して,非債弁済として不当利得の返還を請求することはできません(民法705条)。

3 免責の効力

免責許可の決定が確定することにより,破産者は当然に復権し(破産法253条1項1号),破産手続の開始により生じた公私の資格・権利の制限は消滅します。
旧破産法では,破産手続が終了すれば,免責手続中であっても個別失効禁止の効力が失われるので,破産債権に基づく強制執行が許されていました。
しかし,それでは破産者の経済的更生を妨げてしまう結果となります。
そこで,平成16年改正後の破産法では,破産手続開始申立があったときに反対の意思表示をしない限り同時に免責の申し立てがあったものとみなすこととし(破産法248条1項),破産手続開始後は免責許可の申立についての裁判が確定するまでの間,破産債権に基づく一切の強制執行などの申立はできないこととしました(破産法249条1項)。

4 非免責債権による執行文付与の訴え

(1)事例

Yにつき破産手続が終結し免責許可決定が確定した後,Yに対し確定した破産債権を有していたXが当該破産債権が破産法253条1項2号の「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」に該当するとして,当該破産債権が記載された破産債権者表についてYに対し執行文付与の訴えを提起したケースです。

(2)最高裁判決

最高裁第一小法廷平成26年4月24日判決・判時2225号68頁
免責許可の決定が確定した債務者に対し,確定した破産債権を有する債権者が,当該破産債権が破産法253条1項各号に掲げる請求権に該当することを理由として,当該破産債権が記載された破産債権者表について執行文付与の訴えを提起することは許されない。

5 非免責債権による権利行使方法

破産債権者表に既判力があるとすると,改めて当該破産債権に基づく給付訴訟が別途提起できるかが問題となります。
判例時報2225号70頁の調査官解説では,「執行文の付与を受けられない場合,別途当該破産債権に基づく給付訴訟を提起し,当該債権が非免責債権であることを主張立証することができることはいうまでもない」としているが,破産債権者表に既判力はあるとした上で,訴訟物が別と考えて別途給付訴訟提起を認めているのかは不明です。
この記事を担当した弁護士
弁護士法人ユスティティア 代表弁護士 森本 精一
保有資格弁護士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
専門分野企業法務、債務整理、離婚、交通事故、相続
経歴
昭和60年3月
中央大学法学部法律学科卒業
(渥美東洋ゼミ・中央大学真法会
昭和63年10月
司法試験合格
平成元年4月 最高裁判所司法修習生採用(43期司法修習生)
平成3年4月
弁護士登録(東京弁護士会登録)
平成6年11月
長崎県弁護士会へ登録換
開業 森本精一法律事務所開設
平成13年10月 CFP(ファイナンシャルプランナー上級)資格取得
平成14年4月
1級ファイナンシャル・プランニング技能士取得
平成25年1月
弁護士法人ユスティティア設立
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