特別受益と寄与分

特別受益

特別受益とは、共同相続人の中に、被相続人から遺贈を受け、または婚姻、養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、その受けた限度において、そのものの相続分を減少させ、共同相続人間の公平を図る制度のことです(民法903条)。

 

1 特別受益の種類

(1)遺贈(相続させる旨の遺言を含む)
(2)生前贈与

 

婚姻又は養子縁組のための贈与
これらのための持参金、嫁入り道具、支度金等をいい、結納金や挙式費用は、通常特別受益にあたらないとされています。
その他の生計の資本としての贈与
居住用の土地・建物の購入代金等の贈与をいいます。
 
学費については、兄弟姉妹の中で1人だけ大学や大学院までの学費を出してもらったときは生計の資本としての贈与があったといえると考えられます。もっとも、被相続人の生前の資産収入や社会的地位からすれば、扶養の範囲内にある教育であったとみなされる場合は特別受益とはいえないとされています(京都地判平成10年9月11日判タ1008号213頁参照)。
 
扶養義務に基づく援助は特別受益といえないとされています。

2 生命保険金

生命保険金は、保険金受取人が保険契約に基づく固有の権利として取得する者であるから相続財産には含まれません。但し、税法上はみなし相続財産として、相続財産に含めて計算されますので注意が必要です。

 

この点、最高裁平成16年10月29日決定・判時1884号41頁は、保険金の額、この額の遺産総額に対する割合、保険金受取人である相続人及びほかの共同相続人間の不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持分戻しの対象となると解するのが相当であると判断しました。

 

3 特別受益者の範囲

特別受益を受けた者として持ち戻しをする必要がある者は、共同相続人に限られます。

 

4 特別受益の判断基準時

相続開始時とするのが一般的です。

 

持分免除の意思表示について
被相続人が持ち戻しをしなくてよいとの意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有することが民法上定められています(903条3項)。この意思表示は、黙示でもよく、遺贈の持ち戻し免除は遺言による必要がありますが、贈与については必ずしも遺言による必要はなく、同時でなくてもよいとされています。
 
持ち戻しを免除すると、受贈相続人は、受贈財産の価格相当分を多く取得することになります。したがって、黙示の意思表示が認められるのは、そのような利益を取得する合理的な事情がある場合ということになります。具体的には、
①身体的、精神障害があるために経済的に恵まれない相続人に対し、将来の扶養の意味も含め贈与等がなされた場合、
②子がない、又は子からの扶養を期待できない妻に対して生命保険金を取得させた場合、
③被相続人と同居するために土地使用借権又は建物使用借権を与えた場合、
④寄与相続人に対しその寄与に報いるために贈与等がなされた場合、
⑤金銭には評価されにくい貢献に対してその貢献に報いるために贈与等がなされた場合
などがあります(司法研修所編「遺産分割事件の処理を巡る諸問題」265頁参照)。
 

特別受益の計算方法について

特別受益の計算方法は、相続財産の額に特別受益とされる遺贈又は贈与の額を加算してみなし相続財産を算出します。これに法定相続分の割合を乗じた具体的相続分を算出した後、そこから特別受益額を控除したものが特別受益者の相続分となります(903条1項)。

 

(1) 説例
・相続開始時の財産 1200万円
・相続人は、配偶者甲、長男乙、長女丙の3人
・乙は生前に生計の資本として200万円の住宅購入資金を受けた
 
(2) 計算式
①1200万円+200万円=1400万円(みなし相続財産)
②1400万円×1/2=700万円(甲の相続分)
③1400万円×1/2×1/2=350万円(丙の相続分)
④350万円-200万円(特別受益)=150万円(乙の相続分)
 
特別受益が争いになる場合には、弁護士法人ユスティティア森本綜合法律事務所にご相談下さい。
 

寄与分

寄与分とは、相続人の中に、被相続人の財産の維持、または増加について特別の寄与をした人がいる場合に、他の相続人との間の実質的な公平を保つために、その維持、増加させた相続人に、相続分にかかわらず相続財産の中から寄与に相当する額の財産を取得させることにより共同相続人間の公平を図る制度のことです(904条の2)。
 
例えば、寝たきりの状態の親の介護を自宅で行い財産の減少を防いだ(療養看護型)とか、被相続人の事業である農業や自家営業に無給又はこれに近い状態で従事することで、被相続人の財産を増やした人とかいう場合(家事従事型)等では、被相続人の財産の維持あるいは増加に寄与したとして評価され、「寄与分」として貢献した相続人の具体的な相続分を増やすことが可能となります。

 

1 寄与の要件

被相続人の生存中における相続人自らの寄与であること
寄与行為が「特別の受益」と評価しうるものであること
被相続人の遺産が維持又は増加したこと
寄与行為と遺産の維持又は増加との間に因果関係があること

 

2 寄与の評価基準時

相続開始時とするのが通説です。904の2第1項が「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から」と規定していることがその理由です。
 
寄与分の計算方法について
寄与分の計算方法は、まず遺産から寄与分をいったん控除してみなし遺産を算出します。これに法定相続分の割合を乗じた具体的相続分を算出した後、寄与が認められる相続人の相続分に寄与分額を加算します。
 
(1) 説例
・相続開始時の財産 1200万円
・相続人は、甲(配偶者)、長男乙、長女丙の3人
・乙は、生前に、被相続人の事業に関する財産上の給付を200万円した
 
(2) 計算式
①1200万円-200万円=1000万円(みなし相続財産)
②1000万円×1/2=500万円(甲の相続分)
③1000万円×1/2×1/2=250万円(丙の相続分)
④250万円+200万円(寄与分)=450万円(乙の相続分)
 
寄与分が問題になる場合には、是非専門家である弁護士ひいては、弁護士法人ユスティティア森本綜合法律事務所にご相談下さい。

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